盆栽整枝新技法 太い枝や幹を大きく(小半径化)曲げたい場合、曲げる箇所の内側に切込みを入れる方法が一般的です。 しかし、この方法では水吸の1/3以上は絶たれる為、枯死の可能性が高く、作業も繁雑で事後の手当も面倒です。
今から御紹介する方法は恐らく、少なくともここ十数年盆栽雑誌で紹介された事は無く、軽く検索した範囲でも同様の方法は見つけられませんでした。 それを入手が容易な道具で、簡単な作業で大きく曲げる事が可能になります。切込みを入れる鋸すら入る場所が無い小品や屈曲の激しい樹で特に有効です。
その道具はドリルの刃です。通し接ぎや何かを固定する為の穴開けを電気ドリルで遣る場合も有るので、盆栽の手入れで全く使用しない品物では有りませんが、これから紹介する方法は電気ドリルを使用せず手でドリルの刃を回します。尚、本作業に於いて電気ドリルの使用を否定はしませんが不推奨です。
作業紹介です。使用する物は直径1.5粍のドリル(ピンバイス)、これ以下の細さだと折れ易いのでこの太さが最小と考えた方が良いです。 枝分れ直近の箇所を曲げます。この部位は折れ易く裂け易いので曲げるのに注意を要します。
因みに枝の太さは約7.5粍。穴を空ける位置は曲げる内側で有る事は勿論ですが内側の水吸(形成層)の分を避けて穴を開けないと本作業の意味が削がれます。
針金を掛けて45度程曲げました。角度自体は大した事は有りませんが曲げた内側に「角」と云う感じが出ております。 穴を開けずこの太さの枝でこの曲げ方をすると外側の皮が裂けますが、穴開け処置をしたこの枝の外側は裂ける気配が有りません。
反対側の同程度の枝に対しても同様の処置を施しました。水平に伸びる幹に対して真下に曲げました。 写真ではU字状の幹側を手前側に曲げてL字状に変化しています。 曲げた外側は水吸の損傷程度を観測する為に薄皮をナイフで少し剥がして見ましたが水吸が裂ける気配は有りません。
穴を開けた箇所には癒合剤を塗って於きました。曲げ具合に依っては穴が塞がる事も有りますが大概は穴が残ります。 樹種次第ですが充填剤を詰めるより形成層の成長で穴が埋る事を期待した方が良いでしょう。 癒合剤を塗ったのは表面だけで奥には詰めていません。
幹模様を付けすぎで却って単調になった真柏。 幹の仰々しさに比べて枝の曲は緩く、曲げるには太くなり過ぎていました。 前作業者はこれを曲げずにそれなりに見せる為に取敢えず寝かせて懸崖風にしたのだと思います。
屈曲が激しい感じですが幹の先は根元の直線上に有るので懸崖の幹としては不相応です。 しかも舎利だらけでなので幹を曲げる事は出来ません。 寝過ぎなのを改め、幹を起して半懸崖風にしました。